結論(3行)
- KYは、その日の作業とその日の条件(天気・人・段取りの変化)から、危険を1〜2個に絞るのが基本です。
- 危険は「〜なので、〜して、〜になる」と具体的に、対策は「〜する」と行動で書きます。
- ネタ切れの日は、昨日のヒヤリハット、今日だけ違うこと、天気から探します。下に13工種と天気別の例文を置きました。
ここに挙げる例文は、建設現場でよく話題になる一般的な危険と対策の例です。これを書けば安全になる、というものではありません。現場の作業手順書・元請のルール・法令が優先します。例文は、その日の現場に合わせて必ず書き換えてください。
KYの書き方の型
KY(危険予知)活動は、作業の前に「今日の作業で、どこに危険があるか」を話し合い、対策と行動目標を決めて確認する取り組みです。現場で書く用紙の形は元請や会社によって違いますが、中身はだいたい次の4つです。
| 欄 | 書くこと | 例 |
| 今日の作業 | 場所と作業を具体的に | 2階東側 外部足場の上で 外壁ボード張り |
| 危険のポイント | 「〜なので、〜して、〜になる」 | 足場の手すりを外して材料を入れるので、そのまま作業して端から墜落する |
| 対策 | 誰が見ても同じ行動になるように | 材料を入れたら手すりをすぐ戻す。外している間は墜落制止用器具を掛ける |
| 行動目標 | 短く、声に出せる言葉で | 「手すり、外したら戻す、ヨシ!」 |
危険は「状況・行動・結果」の3つで書く
「墜落に注意」「足元注意」だけでは、何に気をつければよいかが人によって違います。どんな状況で(〜なので)、何をすると(〜して)、どうなるか(〜になる)まで書くと、対策が具体的になります。
対策は「〜に注意する」で終わらせない
「注意する」「気をつける」は行動ではありません。「手すりを戻す」「立入禁止にする」「合図者を1人に決める」のように、やったかどうかが見て分かる言葉で書きます。
工種別の例文(13工種)
危険の欄の太字が「どうなるか」です。その日の作業に近いものを選び、場所・人・機械の名前を入れて使ってください。
1. 掘削(溝掘り・床掘り)
| 危険(〜なので、〜して、〜になる) | 対策(〜する) |
|---|
| 掘削面の際に立って作業するので、土砂が崩れて埋まる | 法面の勾配か土留めを確かめてから入る。湧水・亀裂があれば作業を止めて報告する |
| 掘った土を溝の際に置くので、重みで肩が崩れる | 残土は掘削面から離して置く |
| バックホウの旋回範囲に入るので、バケットに当たる | 旋回範囲を立入禁止にし、合図者を決めてから近づく |
| 既設の管やケーブルの位置が分からないまま掘るので、埋設物を傷つける | 図面と試掘で位置を確かめ、近くは手掘りにする |
2. 高所作業(足場・脚立・屋根)
| 危険(〜なので、〜して、〜になる) | 対策(〜する) |
|---|
| 足場の手すりを外したまま作業するので、端から墜落する | 外した手すりは作業後すぐ戻す。外す間は墜落制止用器具を掛ける |
| 脚立の天板に乗って手を伸ばすので、バランスを崩して落ちる | 天板には乗らない。届かなければ足場や高所作業車に替える |
| 開口部の養生が外れているので、踏み抜いて落ちる | 開口部はふたと表示で塞ぎ、外したら戻す |
| 工具を腰に下げて移動するので、工具を落として下の人に当たる | 工具に落下防止ひもを付け、下を立入禁止にする |
3. 玉掛け・クレーン作業
| 危険(〜なので、〜して、〜になる) | 対策(〜する) |
|---|
| 吊り荷の下を通るので、荷が落ちて当たる | 吊り荷の下に入らない。通路を決めて表示する |
| ワイヤーの掛け方が悪いまま地切りするので、荷が傾いて外れる | 地切りで一度止め、バランスを確かめてから巻き上げる |
| 合図者が決まっていないので、オペレーターが合図を取り違える | 合図者を1人に決め、合図を確認してから始める |
| 介錯ロープを使わずに手で荷を押さえるので、手を挟まれる | 介錯ロープで誘導し、荷と構造物の間に手を入れない |
4. 重機作業(バックホウ・ダンプ・ローラー)
| 危険(〜なので、〜して、〜になる) | 対策(〜する) |
|---|
| バックで動くダンプの後ろを通るので、ひかれる | 誘導員を置き、後退時は人が後ろに入らないようにする |
| 路肩に寄りすぎて走るので、重機ごと転落・転倒する | 路肩に目印を置き、誘導に従って走る |
| エンジンを切らずに降りるので、機械が動き出す | 降りるときはバケットを地面に下ろし、エンジンを切ってキーを抜く |
| バケットで人や資材を吊るので、落下する | 用途外の使い方をしない。吊るなら決められた方法と資格者で行う |
5. 電気作業
| 危険(〜なので、〜して、〜になる) | 対策(〜する) |
|---|
| 停電を確かめずに配線に触れるので、感電する | 検電器で停電を確かめ、ブレーカーに「操作禁止」の札を掛ける |
| 濡れた手や雨の中で延長コードを扱うので、漏電で感電する | 漏電遮断器付きのコードを使い、接続部を濡らさない |
| 架空線の近くでクレーンや重機を動かすので、接触して感電する | 架空線に防護管を付け、離隔距離を決めて見張りを置く |
6. 溶接・溶断
| 危険(〜なので、〜して、〜になる) | 対策(〜する) |
|---|
| 近くに可燃物があるまま溶断するので、火花で火災になる | 可燃物をどけるか不燃シートで覆い、消火器を手元に置く |
| 狭い場所で溶接するので、ヒュームやガスを吸い込む | 換気し、防じんマスクなど決められた保護具を着ける |
| 溶接棒の交換を素手で行うので、感電する | 乾いた革手袋を使い、自動電撃防止装置の作動を確かめる |
| 終業後に火の確認をしないので、残り火から出火する | 作業後と終業時に火気の確認をして記録する |
7. 解体
| 危険(〜なので、〜して、〜になる) | 対策(〜する) |
|---|
| 解体の順番を守らずに壁を壊すので、残った部分が倒れてくる | 作業計画の順番どおりに壊し、倒れる方向に人を入れない |
| 解体ガラが散らばった中を歩くので、釘を踏み抜く・つまずく | 通路を片付け、踏み抜き防止の靴を履く |
| 散水せずに壊すので、粉じんを吸い込む | 散水しながら作業し、防じんマスクを着ける |
8. コンクリート打設
| 危険(〜なので、〜して、〜になる) | 対策(〜する) |
|---|
| ポンプ車のホースの先に立つので、筒先が暴れて当たる | 筒先は決められた人が持ち、まわりは近づかない |
| 型枠の支保工を確かめずに打つので、型枠が崩れる | 打設前に支保工と締付けを点検し、打ちながら見張る |
| 生コンが肌につくので、皮膚がただれる | 長袖・保護手袋・保護めがねを着け、ついたらすぐ洗う |
| ポンプ車のアウトリガーの下が軟らかいので、車が傾く | 敷板を敷き、張り出しを確かめてから始める |
9. 道路上の作業(交通規制)
| 危険(〜なので、〜して、〜になる) | 対策(〜する) |
|---|
| 規制帯の外に出て作業するので、走ってきた車にはねられる | 規制帯の中だけで作業し、出るときは誘導員に合図する |
| 誘導員が車の流れに背を向けるので、車に気づかない | 誘導員は車の来る方を向いて立ち、退避場所を決めておく |
| 夕方に反射材のない服で作業するので、運転手から見えない | 反射ベストを着け、保安灯を早めに点ける |
10. 資材の搬入・荷下ろし
| 危険(〜なので、〜して、〜になる) | 対策(〜する) |
|---|
| トラックの荷台の端で荷をほどくので、荷台から落ちる | 荷台の端に立たず、昇降設備を使う |
| 重い資材を一人で持つので、腰を痛める | 二人で持つか機械を使い、膝を曲げて持ち上げる |
| 搬入車両の出入りに歩行者が近づくので、人と車が接触する | 出入口に誘導員を置き、歩行者を止めてから動かす |
11. 塗装・防水
| 危険(〜なので、〜して、〜になる) | 対策(〜する) |
|---|
| 換気の悪い室内で塗装するので、有機溶剤で気分が悪くなる | 換気し、決められた防毒マスクを着け、休憩をとる |
| 溶剤の近くで火を使うので、引火する | 火気厳禁の表示をし、溶剤の近くで火を使わない |
| 屋上の端で防水作業をするので、後ずさりして落ちる | 端に手すりか親綱を設け、墜落制止用器具を掛ける |
12. 石綿(アスベスト)のおそれがある改修・解体
| 危険(〜なので、〜して、〜になる) | 対策(〜する) |
|---|
| 事前調査の結果を見ないまま壊すので、石綿を含む建材から粉じんが出る | 事前調査の結果と作業計画を確かめてから作業に入る |
| 保護具を外して休憩場所に入るので、粉じんを外へ持ち出す | 決められた場所で保護具と作業衣を外し、付着物を落とす |
13. 片付け・清掃
| 危険(〜なので、〜して、〜になる) | 対策(〜する) |
|---|
| 片付け中は気が緩むので、開口部や段差に気づかず落ちる・つまずく | 片付けも作業の一つとして、開口部と段差を先に確かめる |
| 廃材を高いところから投げ下ろすので、下の人に当たる | 投げ下ろさない。シュートか袋に入れて下ろす |
| 釘の出た端材を素手で持つので、手を刺す | 釘を抜くか曲げてから運び、手袋をする |
天気・季節で足す例文
同じ作業でも、天気が変われば危険が変わります。工種の例文に、その日の条件を1行足すだけでも、毎日同じKYになるのを防げます。
| 危険(〜なので、〜して、〜になる) | 対策(〜する) |
|---|
| 雨:足場板や鉄板が濡れているので、滑って転ぶ・落ちる | 滑りやすい場所を朝のうちに確かめ、歩く場所を決める |
| 強風:高い所で板材を持つので、風にあおられて落ちる・飛ばす | 風が強いときは高所作業とクレーン作業を止めるか判断する。資材は飛ばないよう固定する |
| 暑さ:炎天下で休まず作業するので、熱中症になる | 休憩と水分・塩分の時間を決める。具合が悪い人を見たら、決めた報告先へすぐ知らせる |
| 寒さ・凍結:朝の鉄板や足場が凍っているので、滑って転ぶ | 凍結箇所に砂をまくか、溶けるまで使わない |
| 雷:屋外の高い所やクレーンの近くにいるので、落雷を受ける | 雷が聞こえたら作業を止め、決めた場所へ避難する |
| 夕方・暗い:手元が見えにくいので、段差や開口部に気づかない | 照明を早めに点け、通路の段差に表示をする |
強風については、労働安全衛生規則522条が、高さ2メートル以上の箇所での作業で、強風・大雨・大雪などの悪天候のため危険が予想されるときは作業を行わせてはならないとしています。クレーンと移動式クレーンも、強風で危険が予想されるときは作業を中止しなければならないとされています(クレーン等安全規則31条の2・74条の3)。暑さについては、2025年6月から熱中症の報告体制と手順の周知が義務になりました(熱中症対策の義務化の解説)。
ネタ切れの日の5つの引き出し
毎日同じ現場で同じ作業をしていると、KYのネタが尽きてきます。そんな日は、次の5つから探します。
- 昨日のヒヤリハット:「危なかった」と誰かが言ったことは、そのまま翌朝のKYの一番のネタです。
- 今日だけ違うこと:新しく入る人、初めて使う機械、別の業者との同時作業、資材の搬入、作業場所の移動。いつもと違うところに危険が出ます。
- 天気と時間:雨上がり、強風、暑さ、夕方の暗さ。上の表から1行足します。
- 作業の終わり方:片付け、養生、火の始末、機械の止め方。作業そのものより、終わり際に事故が起きやすいことがあります。
- 職長以外に聞く:若手や新しく入った人に「今日いちばん怖いところはどこ?」と聞く。同じ人が書き続けると、見えなくなる危険があります。
続かないKYのパターン
- 毎日同じ文を写している:書いた人も読んだ人も、もう見ていません。1行でいいので、その日だけの内容を入れます。
- 危険を5つも6つも書く:全部は覚えられません。その日いちばん大事な1〜2個に絞ります。
- 「注意する」で終わる:上の型のとおり、行動で書き直します。
- 書くだけで声に出さない:行動目標を全員で唱えると、作業中に思い出しやすくなります。
- ヒヤリハットを集めて終わり:集めた話を翌朝のKYに戻さないと、出す人がいなくなります。
AI番頭 建太くんでは
建太くんは、朝6時30分に、その日の作業予定と天気から現場ごとのKYの下書きを作っておきます。職長は、関係ないものを消して、気づいたことを足して、確認を押します。
- 危険は、その日の実作業と工種から組み立てます。掘削・高所・玉掛・重機・電気・溶接・解体・打設・道路・搬入・塗装・石綿・片付の13種に、天気の注意と季節を重ねます。
- 最近のヒヤリハット(危ないものから3件まで)が、翌朝のKYに混ざります。
- 手で足した項目は、作り直しても消えません。
- そのまま元請に出せるKY活動記録の用紙が刷れます。作業員はその日の出面から入ります。
下書きはあくまで下書きです。その日の現場の危険を見て決めるのは、職長と作業する皆さんです。
毎朝のKYの説明を見る → 音声ヒヤリハットの説明を見る →
参考にした一次資料
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