- 建設業の許可を受けた業者は、営業所ごとに帳簿を備え、営業に関する図書とあわせて保存しなければなりません(建設業法40条の3)。
- 書くのは営業所の代表者、注文者との契約、発注者との住宅新築の情報、下請契約の4つ。契約書などの写しを添付します(施行規則26条1項・2項)。
- 保存は工事ごとに、引き渡したときから5年(発注者と結んだ住宅新築工事は10年)。図書は引渡しから10年です(同28条)。
建設業法の帳簿とは
ここでいう「建設業者」は、建設業の許可を受けた業者のことです。会計の帳簿(仕訳帳や総勘定元帳)とは別のもので、工事ごとの契約と下請の状況を記録しておくための帳簿です。何を書くか、いつ書くか、何年残すかは、建設業法施行規則26条〜28条が決めています。
「営業所ごと」なので、本店のほかに許可を受けた営業所があれば、それぞれで備えます。
帳簿に書くこと(一覧)
施行規則26条1項は、帳簿に書く事項を4つの号で定めています。
| 号 | 何について | 書くこと |
|---|---|---|
| 1号 | 営業所の代表者 | 氏名、その人が代表者になった年月日 |
| 2号 | 注文者と結んだ請負契約 | イ 工事の名称、工事現場の所在地 |
| ロ 契約を結んだ年月日、注文者の商号・名称または氏名と住所、注文者が建設業者なら許可番号 | ||
| ハ 完成を確認する検査が完了した年月日、目的物を引き渡した年月日 | ||
| 3号 | 発注者(宅地建物取引業者を除く)と結んだ住宅新築工事 | イ 住宅の床面積 |
| ロ 複数の建設業者で建てた建設新築住宅なら、建設瑕疵負担割合に関する割合 | ||
| ハ 住宅瑕疵担保責任保険に入っているなら、その保険法人の名称 | ||
| 4号 | 下請負人と結んだ下請契約 | イ 下請に出した工事の名称、工事現場の所在地 |
| ロ 下請契約を結んだ年月日、下請負人の商号・名称と住所、下請負人が建設業者なら許可番号 | ||
| ハ 完成を確認する検査を完了した年月日、目的物の引渡しを受けた年月日 | ||
| ニ 特定建設業者が注文者となった一定の下請契約(建設業法24条の6第1項)なら、支払った額・年月日・支払手段、手形の金額・交付日・満期、一部払いの後の残額、遅延利息の額と支払日 |
4号ニは、特定建設業者が注文者になり、請け負った側が特定建設業者でも一定以上の資本金の法人でもない下請契約が対象です(24条の6第1項)。注文者である自社が特定建設業者でなければ、ニの欄は対象になりません。
帳簿に添付する書類
施行規則26条2項は、帳簿に次の書類を添付するよう求めています。
| 号 | 添付するもの |
|---|---|
| 1号 | 建設業法19条1項・2項の書面(請負契約書・変更契約書など)またはその写し |
| 2号 | 4号の下請契約が24条の6第1項の下請契約なら、下請代金を支払ったことを証する書面またはその写し |
| 3号 | 施工体制台帳を作成しなければならない工事なら、施工体制台帳のうち、技術者・下請負人・下請工事の内容と工期などを書いた部分 |
添付した書類に1項の事項が書かれていれば、帳簿のどこに当たるかを明らかにしたうえで、帳簿への記載を省略できます(26条4項)。契約書を綴じて、帳簿には「契約書のとおり」と対応を書いておく形です。
いつ、どう付けるか
施行規則27条は、記載の時期を決めています。
- 記載と添付は、請け負った工事ごとに、その事実が生じたとき・明らかになったときに遅滞なく行う(27条1項)。営業所の代表者の欄は、工事を請け負ったときに書く。
- 書いた事項に変更があったときは、変更があった年月日を付記して変更後の内容を書く(27条2項)。
つまり、年度末にまとめて書くのではなく、契約したら契約の欄、検査が済んだら検査の欄、引き渡したら引渡しの欄を、その都度埋めていく帳簿です。
何年残すか
| 何を | いつから数えるか | 期間 |
|---|---|---|
| 帳簿・添付書類 | 工事ごとに、目的物を引き渡したとき(注文者との請負契約の債権債務が消滅した場合は、消滅したとき) | 5年 |
| 帳簿・添付書類(発注者と結んだ住宅新築工事) | 同上 | 10年 |
| 営業に関する図書 | 工事ごとに、目的物を引き渡したとき | 10年 |
営業に関する図書(完成図、発注者との打合せ記録、施工体系図、材料費等記載見積書、その見積りの打合せ記録)は、立場によって残すものが違います。2025年12月12日からは、下請でも見積書と打合せ記録を残す対象になりました。詳しくは下請でも見積書は10年保存にをご覧ください。
記入例
様式は法令で決まっていません。必要な事項が書かれていれば、表計算ソフトでも手書きの台帳でもかまいません。以下は説明のための架空の例です。
| 工事の名称 | ○○町 市道側溝改修工事(下請・土工一式) |
|---|---|
| 工事現場の所在地 | ○○県○○市○○町1丁目地内 |
| 契約を結んだ年月日 | 2026年4月10日 |
| 注文者 | 株式会社○○建設(○○県○○市○○1-2-3) |
| 注文者の許可番号 | ○○県知事 許可(特-○)第○○○○○号 |
| 検査完了の年月日 | 2026年9月25日 |
| 引渡しの年月日 | 2026年9月30日 |
| 添付 | 注文書・注文請書の写し(2026年4月10日付) |
| 保存期限(メモ) | 帳簿:2031年9月30日まで/図書:2036年9月30日まで |
| 下請に出した工事 | 同上工事のうち 側溝据付(○○県○○市○○町1丁目地内) |
|---|---|
| 下請契約の年月日 | 2026年5月8日 |
| 下請負人 | ○○工業(○○県○○市○○4-5-6)/許可番号 ○○県知事 許可(般-○)第○○○○○号 |
| 検査完了/引渡しを受けた日 | 2026年9月18日/2026年9月18日 |
| 支払の記録(4号ニ) | 自社が特定建設業者で、24条の6第1項の下請契約に当たる場合のみ記入 |
エクセルやPDFでもよいか
電子でかまいません。施行規則26条6項は、記載事項がパソコン等のファイルや記録媒体に記録され、必要に応じて営業所で紙や画面にはっきり表示できるときは、その記録で帳簿への記載に代えられるとしています。添付書類はスキャナで読み取った記録でも代えられ(26条7項)、図書も同様です(26条8項)。
備えていないとどうなるか
- 40条の3に違反して、帳簿を備えない・記載しない・虚偽の記載をする・帳簿や図書を保存しない者は、10万円以下の過料(建設業法55条5号)。
- 建設業法の規定に違反した建設業者には、許可行政庁が必要な指示をすることができ(28条1項)、指示に従わないときなどは1年以内の営業停止を命じることができます(28条3項)。
実際にどう扱われるかは事案ごとの判断で、この記事では断定しません。
よくあるつまずき
保存期間を「事業年度の終わり」から数えてしまう
税務の帳簿の感覚で数えると、建設業法の帳簿は早く捨てすぎることがあります。28条は工事ごとに引渡しから数えます。長い工事ほど、捨ててよい日は後ろにずれます。
検査日と引渡日が空欄のまま
契約時に書いて、その後が埋まっていない帳簿をよく見かけます。27条は事実が生じたら遅滞なく書くよう求めています。引渡日は保存期間の起点でもあるので、ここが空だと期限も数えられません。
下請に出した工事が帳簿にない
外注費として支払っているのに、帳簿の4号(下請契約)に載っていないことがあります。支払の記録と帳簿を突き合わせると見つかります。
AI番頭 建太くんでは
建太くんの帳簿番頭は、すでに入っている現場・注文者・外注費・請求の記録から帳簿を組み立てます。足りない欄(契約日・許可番号・検査日・引渡日・支払)を工事のたびに埋めていく形です。帳簿に載っていない外注費は一覧に出て、1タップで下書きになります。
- 許可番号から一般/特定を見分け、特定建設業者が注文者になった下請契約だけ、支払の欄を必須にします。
- 保存期限は工事ごとに、引渡しから5年(発注者と結んだ住宅の新築工事は10年)で数えます。引渡し前は「引き渡すまで、ずっと保管」と出します。
- 営業に関する図書(見積書10年)も、同じ紙に出せます。
帳簿の内容が正しいかどうかの最終確認は、御社で行ってください。
参考にした一次資料
- 建設業法(e-Gov法令検索):19条、24条の6、28条、40条の3、55条
- 建設業法施行規則(e-Gov法令検索):26条(帳簿の記載事項等)、27条(帳簿の記載方法等)、28条(帳簿及び図書の保存期間)
関連する解説
- 作業員名簿の書き方と記入例元請に出す作業員名簿の各欄に何を書くか、記入例とあわせて解説します。
- 再下請負通知書の書き方と記入例施工体制台帳を作る工事で、さらに下へ請け負わせたときに元請へ出す再下請負通知書の書き方を、記入例つきで解説します。
- 持込機械等使用届の書き方現場に機械を持ち込むときの届の書き方と、添える点検・資格の情報を解説します。
- グリーンファイルとは安全書類(グリーンファイル)に何が入っているのか、全体像をまとめます。
- 新規入場者アンケートの書き方初めて現場に入る人が書く新規入場者アンケートの書き方を解説します。
- 熱中症対策の義務化で建設現場がやること2025年6月施行の安衛則612条の2。報告体制と手順の決め方を、掲示・手順の例つきで。
- KY活動の例文集|工種別の危険と対策掘削・高所・玉掛・重機など13の工種と天気ごとの例文。ネタ切れの日の考え方も。
- 下請でも見積書は10年保存に2025年12月施行の施行規則改正で、材料費等記載見積書と打合せ記録が下請にも10年保存に。
- 解説の一覧を見る書類・安全・法令の解説をまとめています。